城下町発掘ニュース特集 ②

幸せになります!
鳥居氏・小山田氏も訪れた?開運スポット~長慶寺~

Written byのり

~長慶寺~

 綺麗な水のもとにだけ咲く白く小さな花、梅花藻(バイカモ)。毎年5月下旬~7月下旬にかけて、都留市夏狩にある長慶寺の湧水池で見ることができます。今まさに見頃を迎えている(2025年6月現在)、長慶寺を尋ねました。ご住職の武藤さんにお話を伺うと、実はこの場所、”最強パワースポット”かもしれないということが発覚!古くは鳥居氏秋元氏も祈願に訪れ、病の治癒や開運を願ったのだとか・・・。幸せになりたい皆さん!要チェックです!

石頭山 長慶寺(せきとうさん ちょうけいじ)
 江戸時代から現在の場所で続く歴史あるお寺。ルーツは室町時代まで遡り、寛正3年(1463年)に天台宗の小さなお寺「長慶庵」としてスタート。その後、代替わりや火事で寺が焼けるなどしたため、移転・改宗。現在の臨済宗妙心寺派に。

◆武藤泰道(むとうたいどう)さん(58)◆
 長慶寺住職。臨済宗妙心寺派としては11代目。東桂で生まれ育ち、県外へ進学・修業。27歳の頃に先代から跡を継ぎ、約30年にわたり長慶寺を守り続けている。

富士山の伏流水が湧く池が
清流にしか咲かない梅花藻の名所に!夏狩地区・長慶寺

富士山の伏流水が湧く池が <br>清流にしか咲かない梅花藻の名所に!夏狩地区・長慶寺 のり:さっそくですが、梅花藻。小さな白いお花が水面からぴょこっと顔を出している姿がとても可愛らしいですね!

武藤さん:そうですね。綺麗な水でしか育ちませんから、生えっぱなしじゃなくて定期的に水中に入ってお手入れをしています。

のり:境内や数十メートル先の湧水池で見られますが、梅花藻はもちろんのこと、どちらも水そのものがとても綺麗で、水が流れる音も心地よく感じました。

武藤さん:富士山の伏流水が湧き出ていて、平成の名水百選にも選ばれています。寺に残る言い伝えでは、昔、西桂町の下暮地に、護満長者(ごまんちょうじゃ)と呼ばれる大金持ちが、家に薬師堂を作って薬師様(薬師如来)をまつっていたのですが、その家が絶えて、薬師堂だけ残されたんです。それが、富士山の伏流水で押し流されて、長慶寺の泉にとどまったので、それをすくい上げて、うちのお寺でおまつりすることになったっていう。

のり:湧水と長慶寺はとても深い縁があるのですね。

武藤さん:そうですね。今は、このあたりの湧水群へ観光や散策にいらっしゃる人も多いですよ。バスツアーの立ち寄りスポットにもなっているみたいです。

 実は、境内も湧水池の周りも、十数年前にかなり整備をしました。もっと木が生い茂っていたので、木を切りましたし、池のそばの東屋は、もともと近所の人に貸していた土地で、農機具小屋だったんです。その方がお亡くなりになって、小屋は壊す予定でしたが、「もったいない」との思いから中を綺麗にし、東屋として再利用することにしました。

実は最強パワースポット?!
薬師如来、弁財天、お稲荷さん、夫婦杉、季節の花々

のり:参拝客や観光客が来やすいようにされたのですね。

武藤さん:そうですね。参拝にみえた方でいうと、江戸時代の頃、勝山城の城主・鳥居氏や秋元氏の祈願所として仰せつかっていたという言い伝えがあります。鳥居氏は、娘さんが目のご病気で、うちのご本尊・薬師様にご祈願をして、境内の小川で目をゆすいだら治ったと。秋元氏は、奥様がご病気で、やはり薬師様にお参りをしたところ、その病も治ったという。それが世間一般に広まって、多くの方、特に目のご病気の方を中心に、長慶寺へ足をお運びになったそうです。


のり:普段、薬師如来像は見ることができるのですか?


武藤さん:いいえ。本堂におまつりしているのですが、普段は厨子(=収納庫)の中です。以前は50年に一度しかご開帳していなかったのですが、私の代になって、50年に一度では檀家さんも生涯ご拝顔になることができないかもしれないということで、今は、毎年お正月の三が日と、薬師様の命日にあたる10月11日だけご拝顔できるようにご開帳しています。

 普段は、厨子の前に薬師様の代わりの像、両脇に日光菩薩と月光菩薩、その前に12体の守り神がいらっしゃって、12体ということで頭の上に干支の十二支があしらわれています。

のり:じっくりと本堂の中を見る機会がなかったので、そんな風になっているとは知りませんでした。実は、長慶寺の境内にもう1か所、気になるところがあるのですが・・・「弁財天」。こちらは?


武藤さん:蛇は弁財天様の使いなのですが、昔から長慶寺は、蛇が境内の守り神だと言われ、よく蛇が出ていたんですよ。これも江戸時代の頃の言い伝えですが、今、弁財天様をまつっている場所は、たくさんの蛇が棲んでいる蛇塚でした。あるとき、村人が蛇を殺してしまい、村に疫病が流行し、それを鎮めるために弁財天様をおまつりしたと言われています。

 一般に弁財天様は、両手で琵琶を抱えた女神様ですが、うちは8本の手を持ち、武器や鍵などを持っていて、頭には白い蛇が乗っています。白い蛇は金運を意味しますから、開運、財福、長寿などの女神様として、近所の方がよくお参りに来ていますよ。

のり:薬師如来に弁財天。ご利益が多そうですね。



武藤さん:実は、まだ他にもあるんです。弁財天様の隣の二本の杉。これ実は、根が繋がっている夫婦杉なんです。
ですから今後、夫婦杉のそばに縁結びの仏様である愛染明王をおまつりしたいと考えています。


 また、本堂の裏には、稲荷神社もありますし、さらに、梅花藻の花言葉は「幸せになる」っていうんですよ。


のり:薬師如来が病気の治癒、弁財天が財福、稲荷神社は五穀豊穣、夫婦杉が縁結び、そして、梅花藻の「幸せになります」。・・・コンプリートですね!!

武藤さん:そうなんです(笑)でも、それだけじゃなくて、境内では季節ごとにいろいろな花が咲きます。桜、梅花藻、夏椿、秋には銀杏や紅葉、冬には山々の雪景色など、四季を通じて自然の美しさを楽しめるんですよ。
また、昔は境内でホタルが見られたということで、境内の奥に小さな小川を設けて、もう一度ホタルが戻ってきてくれるように整備を進めています。

”来るもの拒まず”
お寺=人々に開かれた場所

”来るもの拒まず”<br>お寺=人々に開かれた場所 のり:お話を伺うと、長慶寺には本当に色々なものがあって、多くの方が足を運ぶ場所、運んでほしいと願っていらっしゃるのかなと感じました。

武藤さん:そうですね。昔はお寺って、一般に、ハードルが高くて入りづらいイメージ。住んでいるこちらとしては、お寺ほど来やすいところはないんじゃない?って思っていたんです。だって、広いし、基本的に開いてるから(笑)それに、仏教の言葉で「喫茶去(きっさこ)」という言葉があって、「どうぞ!上がって一杯お茶を飲んでいって!」という意味なんです。ご縁を大切に、来るもの拒まず。そんな感じなので。

のり:歴史あるお寺で、新しいものや、言ってみれば”異質”なものを取り入れることに抵抗はないのですか?

武藤さん:ないですね。宗派的にも、これでなくちゃだめ!という決まりはないんです。囚われを捨てて、今を一生懸命生きましょうっていう。

のり:境内では「”寺カフェ”」もやっていらっしゃるのですよね。

武藤さん:今年で3年目かな。同じ夏狩にある「戸塚醸造」の入り口にあったカフェに、私、よくコーヒーを飲みに行っていて、よく話をしていたんですよ。あるとき、一緒にやりましょう!となって、始めたんです。自家焙煎のコーヒーが看板メニューで、ここにちなんだものもありますよ。夏狩ブレンドや、薬師ブレンド。


のり:薬師ブレンド?!いったいどんな味ですか?

武藤さん:優しい味です。コーヒー豆を、境内の湧水で洗うと、雑味が取れるそうなんです。それで、薬師様みたいな優しい味。あとは、予約が必要なのですが、精進料理も出しています。

のり:カフェの他に、マルシェや縁日などもやっていらっしゃるとお聞きしました。

武藤さん:そうですね。最初は15年ほど前に、ミュージシャンや落語家、沖縄民謡、津軽三味線、アフリカンミュージックなど、色々な人を呼んで、縁日を開いて多くの方に来てもらおうと思ったんです。ただ、その頃は知名度もなく、採算が取れずやめてしまいました。

 でも、お寺だけでは成り立たない時代になってきたと感じています。特に地方では人口も減っているし、墓じまいも多い。だからこそ、何かやっていかないと、このお寺を守っていけないなと思って、いろいろ挑戦しているところです。

「お寺に」だけではなく「都留に」人を呼び込みたい!
お寺を活かした観光を思案中

「お寺に」だけではなく「都留に」人を呼び込みたい!<br>お寺を活かした観光を思案中 のり:もう既に様々な取り組みをされてきたと思うのですが、この先やっていきたいことはありますか?

武藤さん:やってみたいことはいっぱいあるよ!例えば、宿泊業。お寺の体験ができて、精進料理が食べられて、お風呂は湧水のお風呂、みたいな。

のり:なんて魅力的なプラン!

武藤さん:やっぱり来てもらわないと、この町も栄えないですからね。今、バスツアーでうちへ来ても、滞在時間は30分くらいなんですよ。都留に滞在してもらうためには、何が必要か考えています。

のり:武藤さんが思う、都留の推しポイントはどこですか?

武藤さん:やっぱり、水と自然ですね。ただ、整備や準備はもっと必要だと思います。わさび田に行くにしても車がないといけないし、太郎・次郎滝は駐車場から歩く道中に花畑やオブジェなど見所があったらいいなと思うし、勝山城跡も立派じゃなくていいからお城が欲しいし、お寺もたくさんあるんだから市内で御朱印帳巡りはどうかな?とか、レンタサイクルとか、空き家を綺麗にして移住促進とか・・・。

のり:長慶寺に対してだけではなく、都留全体にも、こうなったらいいなというアイデアをたくさん持っていらっしゃるのですね。

武藤さん:人の出入りがないと、活気は戻ってこないですから。まずは都留に人が来て、いいな、移住したいなと思ってもらって、ゆくゆくはお寺にも人が来てくれたらいいなと思っています。

<取材後記>

<取材後記> 27歳という若さで後を継いだ武藤さん。もともと、11代目はお兄様が継がれて、ご自身は県外のお寺へ行く予定だったのですが、お兄様のご病気のため、「自分が長慶寺を守らないと」と、都留へ戻ってこられたとのこと。ですが、当時の檀家さんはご自身よりも遥かに年上の方が多かったため、気後れすることもあったそうです。年齢と経験を重ね、最近では気負うことなくお話しできるようになったといいます。次々にアイデアが浮かぶ武藤さんは、お話がお上手で面白く、聞き入ってしまいました。思案中のアイデアが形になっていくのがとても楽しみです。

 また、今回の記事の中でご紹介したもののほかにも、明治時代にあった仏教弾圧の際にお寺を守ったという「首無し地蔵」など、歴史を感じられるものがありました。お出掛けの際は、湧水と梅花藻だけではなく、沢山の見所を余すことなくチェックしてみてくださいね!

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