都留の優しさ探訪

”よそもの”で勉強が苦手な学芸員。だけど都留への誇りはピカイチ!
ミュージアム都留・福島怜さん

Written byのり

福島さんとは?

「つるのルーツ」プロジェクト発足から1年を迎えるにあたり、今回は歴史に関する記事の監修をしてくださっている、ミュージアム都留の学芸員・福島怜さんに迫ります。自称”歴史好きの変態”だという福島さんが感じる都留の魅力や、福島さんが願う未来の都留の姿とは?お話を伺いました。

◆福島怜(ふくしまりょう)さん◆
都留市教育委員会生涯学習課 ミュージアム都留 学芸員。
東京都青梅市出身。28歳。小学2年生の頃、NHK大河ドラマ「新選組」を見たことがきっかけで歴史に興味を持ち、都内の大学・大学院で歴史学を専攻。現在はミュージアム都留の学芸員として施設・資料管理や歴史調査、企画展の運営など様々な業務を担当。

歴史が好き。その先にあったのが、都留だった!

歴史が好き。その先にあったのが、都留だった! のり:東京都出身の福島さん。実は3年前まで都留に縁もゆかりもなかったそうですね!

大学卒業まで、地元・青梅市で生活していました。卒業後、広島県の一般企業(小売業)に就職したのですが、地元に戻って大学院に入り直しました。その後、都留市職員としての採用がきっかけで都留に来て、もうすぐ丸3年になります。

のり:なぜ都留だったのですか?
本当にやりたい仕事は何かなと考えたときに、学芸員だったんですよね。
学芸員は正規採用が少ないのですが、偶然都留市で採用の募集があったこと、かつ、地元にふらっと帰りたいときに帰れるくらいの距離が良いと思っていたので、そういったところで縁があったんだと思います。

もともと、小学2年生のときに大河ドラマ「新選組」を見て歴史を好きになりました。戦や、戦に至るまでの背景、戦後処理などに興味があって、大学や大学院ではそういったところを主に研究していたんです(福島さんのご専門はゼミの教授の影響などから鎌倉前期)。

大学では教職課程を取っていたのですが、教育実習で何も分からない子に教えること、0を1にすることの難しさを実感しました。得意科目(歴史)だから、分からない子の気持ちが、申し訳ないけど分からない。しかも、ある程度興味関心を引かないと寝てしまう。それならば、多少なりとも興味がある人を伸ばす生涯学習的な仕事の方が自分は向いているんじゃないかと思ってこの道に進みました。

また、大学の先輩や教授に学芸員や元学芸員という人が多く、そういう人たちの姿を見たというのも大きいですね。教授の調査の手伝いで、山梨県立博物館にも来ていましたし、京都の博物館の国宝を触らせてもらったこともあります。それで興味関心があったというのもあるかな。

のり:「歴史が好き」という気持ちの先に都留があったんですね。では、初めて都留に来たとき、どんなことを思われましたか?

自分はすごくなじみやすかったんですよ。山と川に囲まれた環境って地元とあまり変わらないんです。青梅市の中でも西の方の地域の出身で、実家のすぐ下を多摩川が流れていて、10分も歩けば山に入れますし。電車も40分に1本しか走っていない、こことあまり変わらないんですよ。

あとは、町の形自体が、自分からすると面白いんですよね。城下町として町を見てみると、ちょっと歴史が好きな人間には分かるんですよ。名残があるなって。

のり:例えばどこに?

国道139号を90度に曲がるところ(ENEOS都留SS志村貫二商店前)。あれは、城下町の名残なんだろうなと思っています。自然に出来た道ではなく、人工的に作られた感じで、道が狭いのも昔の名残なんだろうなって。そういったところでは、自分は結構良い町だなと思ったんですよね、率直に。

学芸員の仕事に欠かせない「勉強」が苦手って・・・本当?!

学芸員の仕事に欠かせない「勉強」が苦手って・・・本当?! のり:次に、お仕事について教えてください。普段はどんなことをしているんですか?

色々ですね!僕も普通に市の職員なので、事務仕事や課全体の事業(成人式や俳句大会の運営など)もあります。一行政職員なので、異動の可能性もありますし、当然、ミュージアム都留の施設管理や、企画展の運営もしています。

のり:これまでにどんな企画展を手がけたのですか?

1年に1本担当しているんですけど、1年目はミュージアム都留に数万~数十万ある収蔵品の中から、近現代の都留という視点でまとめた企画展をしました。
2年目は増田誠です。僕は美術は専門外なので、色々と勉強しました。ただ、今となっても、あれは良い展示だったのかな?と思うことがあります。
3年目は、森嶋其進の企画展を担当しました。これは入庁する前からやりたかった企画で。森嶋其進は、山梨の歴史を知っている人の中ではそこそこ有名なんですが、地元の都留市民には全く知られていない人物だったので、これはやらないとだめだろうっていう僕の思いがありました。ずっと密かに勉強していたものやこれまでの経験を一気に注ぎ込んで、なんとか形にできました。

のり:企画展を手がける際にこだわっていることはありますか?
今の展示業界の流れでもあるんですが、キャプション(説明文)はそんなに大きいものにはしないんですよ。極力小さくして、資料や作品をよく見てほしいっていうのが、一番のこだわりかな。あとは、都留に関わるものっていうのは当然ありますよね。
自分の企画展や講座で、これが勉強になったとかこれが良かったとか感想を聞いたり、アンケートを見たりして、プラスでもマイナスでも、無関心ではなく何かしらの反応があると嬉しいです。

のり:加えて、「つるのルーツ」の歴史記事の監修もしてくださっているんですよね。

一般市民の人や、市外の人にも知ってもらえる機会を作れたという意味ではすごくよかったなと思いますし、その話を聞いたときにすごくおもしろいなと思ったんですよ。個人的には良いものを作ってくれたな、と思っています。
監修をする際には、見る人が読みやすいように意識しています。堅苦しくなく、歴史に興味がない人にも分かりやすいほうが良いし。そういった点を踏まえて、添削しています。

のり:既に充分すぎるくらいお仕事も勉強も沢山されているように感じるのですが・・・

いや~、本当は家に帰ってからもやらないといけないんでしょうけど、ワークライフバランスだと思ってあまりやらないようにしています。実は、本を読むのが嫌いなんです。

のり:本当ですか?!

本を読むのも、文章を書くのも、古い資料を読むのに必要な古文漢文も、そんなに得意じゃないんです。必要に迫られて勉強しているだけですが、それはどの職業も同じじゃないですか。

博物館の外や市民の声にも仕事や学びが沢山!歴史はすぐそばに

博物館の外や市民の声にも仕事や学びが沢山!歴史はすぐそばに のり:学芸員さん=発掘というイメージがあったのですが・・・

うちもやりますよ。市内の工事現場が遺跡内や付近の場合は事前にチェックしに行くんですよ。例えば、浄化槽の設置の場合は1.5mほど掘るので、遺跡の縄文時代の層に当たることもあります。

のり:何か埋蔵品が出てきたことはありますか?

遺跡の中だと、土器は珍しくなく普通に出てきます。あとは、奈良平安くらいの遺構や、山梨では珍しい和同開珎が出たこともあるそうですし、鎌倉期くらいと推定される人の骨が出てきたこともあります。

のり:実際の発掘は大変なご苦労があると思いますが、とても面白そうです!発掘調査以外に、博物館の外に出て行う「フィールドワーク」はあるのですか?

フィールドに出てみないと分からないこともありますね。森嶋其進展のときは、写真撮影で市内のお寺や神社を回ったんですが、行ってみて、ここってこんな傾斜があったんだ!などと学びがありました。
だから、谷村町で城下町の街歩きイベントもやったんですよ。何もないと思えるところでも、歴史の話をしながら回ってみると、意外と、お!と思うところもあったりしますよね。

僕は都留市出身ではないので、本などから極力勉強しますけど、フィールドに出たり、あとは市民の話を聞く努力をしています。この土地の人にしかわからないことって結構あるんですよ。
「谷村の町は料亭のようなお店が立ち並んでいて、織物業者で賑わっていた」というような話も聞いたことがあります。来館者に、そういった話をしている人もいるよっていう話をすると、今にも一応繋がっているんだっていう意味で、結構面白がって話を聞いてくれますね。

「都留には何もない」とは言わせない! 城下町・都留の魅力を市民全員が語れるように

のり:解説ひとつで、歴史がグッと身近になりますね!最後に、福島さんがこれからやっていきたいことや目標を教えてください。

市民の皆さんに歴史をもっと身近に思ってもらって、地元の人たちが一番都留の歴史に詳しいという状況を作るのが一番大事なのかなと思っています。
いかに興味関心をひいて、いかに巻き込んでいくか。それがたぶん、自分らの仕事なんだろうな・・・。だって自分らだけが奮闘しても、限られますから、できることは。それが市民に広がっていった方が、市内各地にある文化財の保護とかにも繋がりますし。
谷村の町、何もないんだぜでは悲しいですから、みんな何か一言、小話ができるぐらいになればいいですよね。人に聞かれたときに。地元に誇りを持ってほしいですよね。そういう意識を育てるためには、歴史って結構重要なツールだと思います。

<取材後記>

<取材後記> 「歴史が好き」。その思いの先に辿り着いた都留。
でも、お話を伺う中で、自分のやりたい!ばかりではなく、一行政職員としてあるべき姿をとても大事にされていることが強く感じられました。やりたいこととできること・やらなくてはいけないことのバランスを常に考え、理想と現実の良い塩梅を模索。何事も”現実に落とし込むこと”が福島さんの核なのかも知れません。
だからこそ、福島さんは都留の歴史的魅力を、今都留に生きている私たちが身近に、現実的に、感じられるものになるように工夫して発信しようとしているのでは?と感じました。
福島さんが手がける次の企画展やイベントがとても楽しみです。

そんな福島さんが働くミュージアム都留。
なんと!今年4月1日から、誰でも観覧料が無料に!!
ぜひお出かけください!

※一部企画展や特別展は有料。

記事をシェアしよう!

  • Pintarest