都留の優しさ探訪

道の駅つる 10周年|人の想いが育てた場所

Written byかずっち
道の駅つるの外観。10周年を迎えた施設の様子

道の駅つる

道の駅つるが、11月で開業10年を迎えます。

立ち上げ当初は、棚を埋める商品を揃えることにも苦労したといいます。「すぐに潰れる」と言われたこともありました。

今では休日に直売所に行列ができ、山梨県唯一の重点道の駅で、山梨県の道の駅フラッグシップ化推進事業にも選ばれました。

この10年で、何を変え、何を変えなかったのか。立ち上げから関わってきた3人に、話を聞きました。

都留に立ち寄る場所を

道の駅つるがあるこの場所は、かつて田んぼや荒地でした。



すぐそばにはリニア見学センターがあり、毎年たくさんの人が訪れます。ただ当時、訪れた多くは市内に立ち寄ることなく通り過ぎていきました。

都留市側にも事情がありました。大規模な工業用地が少なく、新たな企業を誘致して雇用を生むのが難しい。立ち寄ってもらえる場所もない。

「都留に立ち寄る場所をつくれないだろうか」

そこから、道の駅つるの計画が始まりました。開業は2016年11月5日。


※開業当時の様子

地元農産物の直売所とレストランを備えた、小さな施設としてのスタートでした。

何もないところから始まった



「当時は、不安しかありませんでした」

副駅長の前田さんは振り返ります。立ち上げメンバーの一人で、建設課のアルバイトから事務員として加わりました。

システム導入はオープンぎりぎりでした。農産物の登録作業に追われ、レストランは手書きのメニュー表のまま初日を迎えました。



整理券はポストイットで配り、お米を炊き忘れた日には、テーブルごとに謝って回りました。
棚を埋める野菜が足りず、売り場づくりに苦労する日もあったといいます。

開業前の説明会では、地域から「本当に大丈夫なのか」と反発の声が出ました。スタッフが出荷を頼んで農家を回っても、懐疑的な反応が返ってくることもあったといいます。

そもそも当時の都留市には、農業を専業とする大規模な生産者が多くありません。出荷される野菜も、家庭菜園の延長のような規模が中心でした。

それでも、スタッフは農家を一軒ずつ回り、生産者と関係をつくりながら、棚を埋めていきました。

当時の産業建設部長で、運営会社の初代社長を務めた高部さんは、こう振り返ります。

「とにかく、潰さないこと。それだけを考えていました」

苦情に、ひとつずつ応えてきた

開業の冬、宮城県から牡蠣を取り寄せ、実演販売を行いました。東日本大震災の復興支援として、都留文科大学のOBと組んだ企画でした。
道の駅の前に行列ができ、「工夫すれば人は来てくれる」とスタッフは感じたといいます。


※宮城県産牡蠣の実演販売の様子

開業から数年が経った頃、レストランの本格的な改善が始まりました。前田さんはこう振り返ります。

「最初は、地元の野菜だけを売りたいという思いが強かったんです。でも、いざオープンしてみると、お客様が求めているのはお土産や、もっと多様なものだったんです。」

お客様の声に一つ一つ向き合いながら、改善を重ねてきました。

例えば、レストランのお皿をきちんとしたものに替えました。「水がまずい」と言われ、給水機を入れました。惣菜コーナーでは、手作りのメンチカツを開発しました。


※現在の惣菜売り場の様子

直売所では、生産者組合の組合長やスタッフが売り場を見回り、基準に満たない野菜があれば取り除くようになりました。

前田さんは続けます。

「大きな道の駅が次々とできる中で、ここは小さい。だからこそ、みんなの意見をよく聞き、人を大事にする。そこだけは譲れませんでした。」

道の駅の周年祭で打ち上がる花火を見ながら、前田さんは涙が出たといいます。



「開業当時はすぐ潰れると言われてきたけど、ここまで来たぞ、と思って」

今では、都留市産の桃やとうもろこしの時期に、オープン前から行列ができる日もあります。季節の収穫祭には県外からも人が訪れます。朝食の提供を始めてからは、観光のスタート地点として立ち寄る旅行者も増えました。

そうしたなかでも、レジの脇には今も手書きのポップが並び、お客様はスタッフに「この野菜、おいしかったよ」「また買いに来たよ」と声をかけます。

現駅長を務める小俣さんは、この場所の役割をこう語ります。

「道の駅つるは、都留市の中でも多くの人が集まる場所であり、市を代表する観光スポットのひとつだと感じています。地元のお客様だけでなく、市外や県外から訪れる方も多く、人と地域をつなぐ場所になっています。生産者にとっても、自分たちが育てた農産物や手づくりの商品を通して、お客様に喜んでいただける、やりがいや張り合いを感じられる場所だと思っています。」

距離感を、どう保つか



10周年を迎える今も、来客は年々増えています。山梨県の道の駅フラッグシップ化推進事業の対象施設にも選定され、施設としての役割は広がっています。

施設だけでなく、働く人たちの関係性も10年で変わってきました。余裕のない時期もありましたが、長く働いてきたスタッフ同士は、いまでは自然に動きを合わせています。

ただ、規模が広がれば、お客様や生産者との距離はどうしても変わります。
一人ひとりに対応する余裕も減ります。これからの10年は、その距離感をどう保つかが課題になりそうです。

小俣駅長は言います。

「スタッフ、生産者の皆さま、地域の方々、そして訪れてくださる旅行者の皆さま、誰もが温もりを感じられる場所にしていきたいと思っています。人と人とのつながりを大切にしながら、また来たいと思っていただける道の駅を目指していきたいです」

道の駅つるは、ただ商品を販売する場所ではなく、人の思いや関わりの中で少しずつ形づくられてきた場所です。

道の駅つるはこれからも、人と人をつなぐ場所として、地域と共に歩み続けていきます。

■10周年記念キャラクター 名前募集中
道の駅つるでは、10周年を記念して誕生した新キャラクターの名前を募集しています。
スタッフたちがアイデアを出し合いながら、形にしていったキャラクターです。
X(旧Twitter)Instagramでは、すでに多くのコメントが寄せられているそうです。

【応募期間】令和8年5月15日〜7月31日
【応募方法】X(旧Twitter)またはInstagramの対象投稿へ、コメントでキャラクター名を投稿
【注意事項】SNSでの応募は1アカウントにつき1回まで
詳細はこちらからご確認ください。

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