城下町発掘ニュース特集 ②

【ふるさと時代祭直前特集!】大名行列の見どころとは?!

Written byひなこ

大名行列について

都留市で開催される大規模なお祭りといえば「ふるさと時代祭り」。中でも「大名行列」は長い歴史をもち、人々から愛され続けてきました。今回はそんな大名行列についてお話をしていこうと思います!大名行列保存会会長である鈴木さんから伺ったお話や、鈴木さん自身が出版に携わった『都留市市下天神町大名行列保存資料集』を参考にしながら、皆さんが「なるほど~」と思えるような様々な大名行列にまつわるエピソードを集めました。これを読んだら、貴方はもっと大名行列に魅力を感じることでしょう。

昔は行列を高いところから見てはいけなかった?!

昔は行列を高いところから見てはいけなかった?!  現代において、大名行列をどこから見るかというのはあまり問題視されていません。近くまで行って見る人もいれば、高いところから全体を見て楽しみたいと思う人もいることでしょう。しかし、家の2階のような高いところから行列を見物する行為というのが昭和30年頃までは禁忌事項であったというのです!また、行列を横切るという行為も禁忌だったといいます。
 ある時、行列の先目付役が、2階から大名行列を見物していた数人を見咎め、一段と大きな声で「下にィ」「下にィ」と下に降りるように促しましたが、彼らはそれに応じなかったため、目付は持っていた十手を彼らの方へ投げつけたというエピソードがあります。それに驚いた彼らは早急に階下に降りたそうですが、今の時代ではとても危険で考えられないことですよね。ですが、本来の大名行列の意味や当時の身分制度などを考えると、大名の目線より高い位置から行列を見下ろすというのはとても失礼なことだったのかもしれません。それほどまでに大名行列を行う側も大きな誇りをもちながら取り組んでいたことが分かります。

「ヨイヤマッカ、ヨイ!」の掛け声の意味

「ヨイヤマッカ、ヨイ!」の掛け声の意味  この大名行列で最も特徴的なものとしては、「ヨイヤマッカ、ヨイ」という独特な掛け声が挙げられます。この特徴的な掛け声の由来や意味については、現在に至るまで明らかになっていません。しかしいくつかの説があるようです。まず、<ヨイ(宵)・ヤ(または夜)・マッカ(昼間)・ヨイ(宵)>と解釈し、「宵(夜)から昼そして宵まで」という意味を表すのではないかと考える説があります。
 また、他のお祭りで頻繁に使われる「ワッショイ」や相撲における「ハッケヨイ」がヘブライ語であるという説から、同様の類ではないかと考える人も多いといいます。
鈴木さんは「ヨイヤマッカヨイ」という言葉をヘブライ語でとらえた場合、「ヤマッカ」は「帽子」、「ヨイ」は「やっつけろ」という意味があることを知りました。その結果、帽子つまり大名行列でいう兜になるわけですが、「兜をかぶって敵をやっつけろ」という意味なのではないかと考えていらっしゃいます。文字として残っている資料は極めて少ないため、真実を知るのは難しいことではありますが、他言語まで関わっている可能性があるのは興味深いです。

無の字が持つ「無の字槍」は徳川家康お墨付きの証拠!

無の字が持つ「無の字槍」は徳川家康お墨付きの証拠!  都留市で行われる大名行列には様々な役割をもった人々が登場します。お殿様やお姫様、侍や鉄砲隊など、およそ35もの役割があります。今回注目するのは、「無の字」と呼ばれる役割です。この無の字は「無乃字槍」という槍を持っていて、赤熊と呼ばれる毛槍の動きに合わせて動きます。実はこの「無乃字槍」、ただの槍ではありません。昔この地域を治めていた秋元泰朝が徳川家康より拝領した由緒正しき槍でした。秋元氏は大坂冬の陣の大阪城掘の埋め立てで活躍をしたことから、5千石を与えられ大番頭を担っていましたが、その後大坂夏の陣後の残党討ちも任せられ、その際に槍を授けられたそうです。この槍は代々秋元家の家宝として受け継がれていたとされています。大名行列でこの槍を使用していることから、武器というものは自身の武力を示すだけにとどまらず、自身の権力までも誇示することにもつながるのだと考えられます。

赤熊の技術

赤熊の技術 大名行列にはまだまだ見所があります。その1つは赤熊(しゃぐま)と呼ばれる役割です。その名の通り、赤熊と呼ばれる毛槍(先端に鳥毛の飾りをつけた槍)をもち、上部の毛を回しながら踊ります。しかしこの役割には、高度な技術が求められます。まずは、重さに耐え、バランスを上手くとらなければなりません。赤熊の重さはおよそ5kgであり、毛のせいで上部に重さが集中するためバランスをとらなければなりません。そのためにはしっかり赤熊を垂直に保つ技術が必要です。バランスをとりながら、上部の毛が綺麗に回るよう練習を重ねます。それに加えて、赤熊をリズムに合わせて投げて受け渡しをする動きがあります。ただでさえバランスをとることが難しいのに、赤熊役全員でタイミングを合わせて行う必要があります。今は道路の幅が狭くなっていますが、昔は道が広かったため、4mほどの距離を投げなければならなかったそうです。また、この技術を習得するために昔は1ヶ月ほどの練習期間を設けていました。ぜひ大名行列を観覧する際には彼らの動きにも着目してみてください。

感想

今回大名行列にまつわるエピソードをいくつかご紹介しましたが、どれも興味深いものばかりで書いていてとても楽しかったです。他にも奴さんの踊りが他の地域の大名行列に比べてなめらかであることも見所のひとつです。そして、殿様の草履持ちと椅子持ちの役割というのは実は奴のなかでも格が高いことも鈴木さんから教えていただきました。是非探してみてください。また、記事を執筆していて個人的には「ヨイヤマッカヨイ」の掛け声については、いくつかの説があり、ロマンを感じました。日本国内の催しに外国の言葉の面影を残しているというのは面白いですね。解明が難しい事だからこそ、より多くの推測や想像が生まれ、議論を深められるのは素敵なことだと思います。皆さんにとって、八朔祭の大名行列という催しは身近なものかもしれませんが、案外その歴史などの詳細を知る機会というのは少ないかも知れません。この記事を通して、少しでも大名行列の魅力が伝わり、興味をもってくれる人が増えるといいなと思います。

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